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ナムジャイブログ
泰国春秋 第十五回 ビザウツ

2009年11月27日

ビザウツ

2月初め、ジャーナリストには滅多に取材査証(ビザ)を出さない某M国の在バンコク大使館にて。ある医療プロジェクトを同国で推進する財団の同行取材という名目で久々にビザが出るというので、取りに行った。
同国保健省からの招聘状とともにビザ申請書類を提出した。通例、その場ですぐに発行されることはない。ビザを出す場合は、たいてい渡航日の前々日の夕方に連絡がある。「ビザ・セクションの開く翌朝9時に来るように」との連絡を受け、渡航前日に再び出向いた。すでに「ビジネス査証」の窓口は長蛇の列ができている。が、今回は招聘取材だからなのか、単に窓口担当官の機嫌がいいからなのか、先に取材ビザを発行するらしく「そこで待っておれ」と言う。(いつもは「午後イチで取りに来い」と言われる)
日本放送協会(NHK)のO記者や他紙・他局のタイ人スタッフなどが来ている。O記者は「15分で出すと言ったけどねぇ」。時計をみると9時45分。筆者がやや遅刻してきたせいもあるか。「気長に待とう」という心持ちがだんだん失われて「おい、まだかよ」と思い始めた10時半ごろ、各人が呼ばれた。
申請順にビザ付のパスポートを返され、入国許可証を渡される。筆者の番になった。ビザ担当官は、なぜか「あ、あれ?」というような表情だ。手元に許可証がないらしいのである。二人で顔を見合わせていると、先に許可証を受け取ったフジテレビのスタッフが戻ってきて、「これは違う人のだと思います」と、この担当官に許可証を返却した。そこには筆者の名前が「会社名:フジ」で入っている。
おいおい、これじゃ貴国は受け入れてくれないだろ。担当官も苦笑い。書類を受け取って書き直し作業に入り、おそらく上司のサインをもらいに室外へ。15分後、戻ってきた担当官から書類を受け取りチェックすると、今度はなんと「国籍:タイ」となっていた。
なぜ関係ない項目まで書き直す!と思わず声を出しそうになると、先ほどのフジテレビのタイ人スタッフが「わたしの国籍が日本になっている…」
この担当官、なにかを根本的に勘違いしていたのか、単に能力の問題なのか。そこに朝日新聞のタイ人スタッフが外から戻ってきて担当官に一言。「記者の名前が間違っています」
もう全面やり直しである。すべての申請者の名前、所属(会社名)、国籍、旅券番号をチェックして、プリントアウトし直し、判を押して、上司のサインをもらいに出かける担当官。手元に正しい入国許可証が戻ってきた時にはあと1分で午前11時という時間帯だった。というか、本気でやれば15分で出来るのかいな。
問題はこの間、午前9時から列を作っている他の人々は申請書を提出することすらできず、ひたすら待たされたままだったことである。担当官はこの人ひとりだけ。「なんかコイツらのせいで窓口がふさがっている」との痛く冷たい視線を背中に受け続けた。目に怒りをたたえた西洋人らの「ジャパニーズジャーナリストが云々…」というコソコソ話(たぶん悪口)も聞こえてきて、居たたまれなさに身もだえした。日本人ならば、もう一人をあてがって他のビザ申請書を受け付けるとか作業に当たらせればいいのにと思うのだが、そういう発想がないのだろうか。ないんだろうね。
ビザ・セクションに他の人がいない訳ではなかった。ただ、手の空いていそうな人は、特別扱いで窓口の向こう側に入ってビザ発行手続きをしているタイ人僧侶とお茶を飲みながら談笑にふけっている。
何かが違う、とガックリくる場面を、また味わってしまった。まあ嫌いじゃないのだが疲れるのよ、ホント。


三河正久(みかわ・ただひさ)日本経済新聞社バンコク支局長
1967年5月青森県八戸市生まれ。1992年日本経済新聞社入社。同社産業部や『日経ビジネス』編集部で企業取材を担当。2007年3月から現職。共著に『ゴーンが挑む7つの病|日産の企業改革』『トヨタはどこまで強いのか』など。日本で公務員批判が過激に強まったのは国鉄改革の頃からか。批判は多くあれど、日本はアジア他国比で、やはり相当に高いサービス水準にあるのだなと思う。って欲しくはないが。
Posted by Webスタッフ at 19:46